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演劇 『そうじゃないのに』 観劇記

韓国の劇団 青羽 (극단 청우) の演劇 『そうじゃないのに / 그게 아닌데』 を新宿タイニイアリスで見ました。

soujanainoni.jpg


劇団 青羽の演目は 5 年前にも同じくタイニイアリスで見ていたのですが、今回も同じ劇団、同じ演出家という認識が全くなく、誘ってくれた友人に指摘されて 「そうだった!!」 と気づいた次第... 。

劇団 青羽 『足跡のなかで』 (2008 年 8 月) の観劇記は
旧館にあります。チョン・ギュスが出演するというので、駆けつけたことが懐かしく思い出されます。

最近日本で多く上演されるようになった韓ミュには日本語字幕が付いていますが、演劇 (ストレートプレイ) を日本語字幕付きで観られる機会は滅多にありません。どちらかというと、ミュージカルよりストレートプレイの方が好きなワタシにとっては、ソウルでストレートプレイを観るのは、言葉の壁がなんとも歯がゆく、字幕はとてもありがたいです。

この 『そうじゃないのに』 は、昨年韓国で演劇賞を総なめにした作品です。



『そうじゃないのに / 그게 아닌데』
7 月 7 日 (日) 15:00 ~ タイニイアリス
Alice Festival 2013
 
soujanainoni1.jpg


作: イ・ミギョン
演出: キム・グァンボ
出演: 
ユン・サンファ → 調教師
ムン・ギョンヒ → 母親
カン・スンミン → 同僚、象
ユ・ソンジュ → 医師
ユ・ジェミョン → 刑事

<2012 年 受賞歴>
東亜演劇賞 - 作品賞、演出賞、演技賞 (ユン・サンファ)
히서연극상 - 今年の演劇人賞 キム・グァンボ
大韓民国演劇大賞 - 大賞、演出賞、演技賞 (ユン・サンファ)
韓国演劇誌ベスト 3
評論家協会演劇ベスト 3


象の調教師だった男が取り調べ室に座っているところから始まる。動物園から象が脱走する事件が発生したためだ。象はおりしも大統領選挙運動中の有力候補が遊説場所に踏み込んでしまったのだ。

まず精神科医師がこの調教師を分析し始める。家庭において父親よりも高圧的だった母親の元で成長した調教師が、象に普通とは異なる愛情を注ぐあまり、幻想の世界で象と交わりながら生きていると主張する。調教師の同僚の証言まで取りつけて。

そうじゃないって... と調教師。

ついで刑事の取り調べ。象の暴走は大統領候補の演説を妨害する行為で、今回の事件の裏には黒幕がいて意図的なものだと主張し、調教師を問い詰める。

そうじゃないって... と調教師。

そこへ調教師の母親が登場。息子は優しい性格なため、子供の頃から閉じ込めらている動物を放してやっていた。今回は事件をひきおこして、刑務所に閉じ込められている囚人たちを開放したがっているのだと話す。

そうじゃないって... と調教師。

調教師の説明はこうだ。子供がハトを驚かせハトが飛ぶ立つと、ガチョウがガアガアと騒ぎ初め、そのガチョウの騒ぎに驚いた象が檻から駆け出したのだと。しかし、だれも彼が話す真実をとりあわない。意思疎通ができず孤立した調教師は、3 人がでっち上げた話に口を閉ざして、象になることを選ぶ。


soujanainoni3.jpg


とにかくセリフの多い演劇なので、字幕と舞台を交互に観るというい忙しい作業に追われる 1 時間強。韓国語の長いセリフを字幕ではどうしてもカットせざるを得ない部分も多かったそうで、戯曲集が出たらいろいろ確認したいところがたくさんあります。おそらく読み物としてもかなり面白い作品だと思います。

本作は 2005 年に実際に起こった象の動物園脱走事件をモチーフとして書かれたものだそうです。

ひとつの事件をめぐり、さまざまな解釈が生まれ、話にどんどん尾ひれがついていく... 真実は実にシンプルなものなのに、ドラマティックな展開がひとり歩きしてしまい、真実の声に耳を貸さず、真実が埋もれていく社会を風刺しているようでもあります。

意思疎通の不在を際立たせ、ファンタジーというよりアレゴリー的な要素の強い作品でした。人との意思疎通を諦めて象になった調教師は、他の象と仲睦まじく意思疎通もできるようで幸せそうに見えたことが、なんだかとても哀しかったです。

この作品は、取調室という閉鎖的な空間の中で繰り広げられる単幕劇で、シンプルで地味な舞台なのですが、非常に濃い空間でした。精神科医師、刑事、母親が勝手に作って飛躍する話も、容易に想像できるような説得力を持っていて、変なのは調教師の方ではないかと錯覚してしまいそうになる自分が可笑しくなったりしました。

登場人物は誰もが真剣なのです。茶化しているわけではないのに、笑いがこぼれてきます。彼らの話は決して交錯することなく、いくつも平行線が描かれている感じです。同じ空間、同じ時間を共有しながら、共有できない思い...。笑いながらも、ちょっと切なくなりました。わずか 1 時間少しの間、物語の中へぐいと首根っこを引っ張られたような吸引力の強い作品で、ワタシはこういう作品が好きですね。

アフタートークでの演出家キム・グァンボさんの話をじっくり聞くこともできて満足でした。



tag: 韓国演劇

コメント:

No title

私も「足跡のなかで」の記事をLotusさんがUPした時にコメントしたのをすっかり忘れてました!!
「そうじゃないのに」は「足跡のなかで」よりはわかりやすい作品でしたね。いくら説明しても周りに誤解される主人公。不条理劇かと思いきやラストでファンタジーになる、そこが斬新でした。
場面転換がなく、セットも取り調べ用の机とイスがあるだけのシンプルなもので、今はやりの華やかな舞台とは正反対。だからこそセリフと役者の演技が重要になってきます。そんな芝居を日本語字幕で観られたのはラッキーでした。でもセリフの量が多くて字幕を読んでると役者の細かい演技を見逃してしまうというジレンマがありました。もう一度観たい!
演出のキム・グァンホさん、韓国の演劇のことを真剣に考えている方でしたね。作風からしても「韓国の野田秀樹」って感じでしょうか。

なあごさんへ

なあごさん、コメントありがとうございます。

なあごさんに誘っていただかなければ、こんな楽しい芝居を見逃すところでした。そして言われなければ、チョン・ギュス → ダルビッシュ似の米屋 → 劇団青羽には結びつかず... なあごさんとニアミスだった 「足跡のなかで」は 5 年も前のことだったのですね。

> 不条理劇かと思いきやラストでファンタジーになる
そうそう、「足跡のなかで」は、人間の生活に芸術は必要なのかというような大命題が投げかけられて難しいと感じました。「そうじゃないのに」の方が、笑えるところもたくさんあってエンターテイメントとしても楽しめました。でも、あのラストはハッピーなのかサッドなのか... やはり考えてしまうわ。
ほんと、もう一度確認したい作品です。

>演出のキム・グァンホさん
アフタートークを聞いて、すっかりファンになった気分... ワタシのストライクゾーンではないけど(笑)、彼の演出作品は追いかけたいですね。

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なお、旧館からの移行記事 (2012年3月以前) はうまく反映されていないものがあります。

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