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ミュージカル 『Thrill me スリル・ミー』 感想

ミュージカル 『Thrill me スリル・ミー』  2012 年 7 月公演 天王洲銀河劇場

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■ 原作 / 音楽 / 脚本 ■ Stephen Dolginoff

■ 演出 ■ 栗山民也

■ 出演 ■
私: チェ・ジェウン
彼: キム・ムヨル
ピアノ伴奏: オ・ソンミン

■ ストーリー ■

刑務所での囚人仮釈放審議委員会。
審議官に問われるまま、「私」 は 34 年前に犯した自らの罪を語り始める。
「私」 と 「彼」 は、なぜ子供を殺したのか。
飛び級で大学を卒業するほどの頭脳明晰な二人にいったい何が起きたのか。
物語は、34 年前に遡る。

19 歳の 「私」 と 「彼」 は高等学校以来、久しぶりに再会。
法律を学ぶ大学生で、頭脳明晰、幼なじみでもある彼ら。
ニーチェを崇拝し、自らを特別な人間=超人だと語る「彼」は、刺激を求め、犯罪を行うことでしか自分を満たすことができない。「私」 はそんな 「彼」 を愛するがゆえに、求められるままに犯罪に手を貸していく。

より深い束縛を求める二人は、互いの要求の全てに応えるという契約書をつくり、血でサインをする。
契約書のもと、二人の犯罪は次第にエスカレートしていった。


□ □ □ □ □




ミュージカル 『スリル・ミー』 は、1924 年、シカゴで実際に起こった理由なき快楽殺人事件 「レオポルドとローブ事件」 に基づいて製作されています。


レオポルドとローブ事件

ネイサン・レオポルド (「私」) とリチャード・ローブ (「彼」) は、ともに一流大学の大学生でニーチェの超人思想の信奉者であり、完全犯罪を成し遂げることで超人であることを証明しようとした。 2 人は少年を誘拐して殺し、排水路に死体を隠した後、身代金目的の誘拐だったように見せかけるため入念に工作した。完全犯罪であるはずだったが、現場にネイサンの眼鏡が落ちていたことが、事件発覚の鍵となる。



2 人ミュージカル、いや、2 人芝居と言った方がいいのかしら。演奏はピアノだけなのに、旋律がとても情感豊かでダイナミック。舞台はシンプルな造り、照明の使い方も工夫が凝らされていました。

105 分間、幕間がなく、また観客は拍手を送る手合いもなく、一旦、ピアノが Prelude を奏でたら、エンディングまで一気に走り続けて舞台に釘づけ状態になりました。

韓国ペアの上演は日本語字幕付きなので、字幕と役者の両方を見るのはとても忙しい...当初は 1 回でも見られたらいいわと思っていたのですが、結局、韓国ペア千秋楽を追加して 2 回見ましたが、正解でした。2 回目はもう字幕に頼らなくてもいいので、舞台に集中できたことが良かったです。欲を言えば、もう 1 回見たかったな (笑)。

5 月の訪韓時に 『光化門恋歌』 を見に行った際、会場で 『スリル・ミー』 の広告が出ていたのを見て、えっ、東京で上演するんだ~と思ったのがコトの始まり。キム・ムヨルが、『光化門恋歌』 で共演していたチェ・ジェウンとともにも来日するとは...。

韓国ミュージカル事情にはとんと疎いワタシは、このチェ・ジェウンとキム・ムヨルのペアが、『スリル・ミー』 韓国伝説ペアなどとは全く知らず。チケットを取ってから知りました (笑)。韓国では、もうやらないって言ってたらしいです。そんなペアを日本で見られるとは...。

キム・ムヨルをめぐっては、いろいろありましたが、無事に来日して、精神的にツライ中でもステキな舞台を届けてくれてホントに感謝です。 

このペア、歌唱力がずば抜けています。ペアで 200 回以上、公演しているだけあって呼吸の合わせ方も完璧なんです。

特に翻案もののミュージカルが苦手なワタシに万難を排してまで見に行こうと思わせてくれたのはキム・ムヨルのおかげですが、裏切られることのない演目でした。


□ □ □ □ □


1 回目 (韓国ペア 7 月 27 日)

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そもそもキム・ムヨル目当てで見たかった演目でしたが、ムヨルのみならず相手役のチェ・ジェウンにも心の隅っこをずっと引っ張られたままでした。さすが最強ペア。2 人がかりで、ワタシの心をつかみかかってきました。

そして、スーツ姿のキム・ムヨルには、ただただ、ため息しか出ません。

ラストの 「私」 は、してやったりと 「彼」 に仕返しをしたわけでなく、それほどまでの思いのたけを、「彼」 に受け止めてもらいたかったのかな。 でも、「彼」 は 「私」 の思いを受け止めきれず、その重さにつぶされてしまいそう。

そこまでしてつなぎ留めたかった 「私」 の悲しき痛みがひしひしと伝わってきて、その思い、わかるわ~と。ずっと 「私」 と同じ視点で 「彼」 を見てしまいました。


「私」 の心をもてあそぶ 「彼」。ニーチェに心酔し、己の優位性を示したいがために 「私」 を従えて、「私」 より常に一歩先んじているつもりだった。「私」 の気持ちを利用して、「私」 の心を掌中に収めているものと思い込んでいた浅はかさ。 「私」 が 「彼」 の脆さも実は知り尽くしていたことを、「彼」 は知らない。

そんな 「彼」 の愚かさが、なんとも愛おしかったりするので、はぁ、困ります。
だいたい 「彼」 が漂わせる色気がすべてを狂わせ、はぁ、もうどうにでもなれと思ってしまうではありませんか。

終演後のトークで、互いに舞台上の相手のどこが好きが聞かれて、キム・ムヨルったら、チェ・ジェウンを抱きしめたり触れたりしたときの 「手の感触」 と応えていましたが、自分に言われたわけでもないのに、ずっと 「私」 視点で追っていたせいかついついその手の感触を想像してしまって、心の中でひとり興奮したワタシ。どこまでも 「彼」 は艶っぽい...。



2 回目 (韓国ペア千秋楽 7 月 28 日)

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私 チェ・ジェウン


前日にもまして、2 人ともキレ味が冴えていました。

チェ・ジェウンは、34 年後の 「私」 のモノローグ部分と、事件当時の 「私」 の部分を、ライトのスイッチオン・オフで切り替えをするのだけど、時間を行き来する切り替えが実に上手いなぁと。

「私」 をそっけなくあしらったり、炎を見て酔いしれる 「彼」 キム・ムヨルの囁くような声はゾクゾクもの。研ぎ澄まされたナイフのごとく 「私」 の心に切りこんでいくのだけど、反面、実はそのナイフは脆かったりする。そうした、両刃の剣のよう繊細さがよく表れていました。

事件が発覚して、不安をさらけ出す 「私」 と冷静さを装う 「彼」 の対話がテンポよくて、キム・ムヨルが一方的に電話を切るときの 「끊어!」 と言うのが好き。 そんな風に切られたら、また電話したくなるわ (笑)。

さすがにもう何百回と組んでいるペアだけあって、息の合わせ方、立ち振る舞い、リアクション、どれをとっても澱みがありません。韓国の演出と異なるこのプロダクションの演出の消化力もスゴイと思いました。

後半、護送車の中あたりから、2 人の感情と感情のぶつかり合いがビシビシ伝わってきました。先に 「彼」 が涙し、ラストは 「私」 が鼻水すするほどに... ついついこちらもウルウル。

犯罪によってスリル感、高揚感を得ること、それは優れた人間である 「超人」 には許されたことだと思い込む 「彼」 の偏狂。 その 「彼」 の偏狂を 「私」 の執着が取り込んでいく緻密な過程に驚かされます。この劇空間を 「人が人を欲する空間」 と柿澤勇人が語っていたけれど、まさにその通りだなと思います。

キム・ムヨルには、苦手なミュージカルの世界への扉を開けてくれてありがとうと言いたいんだけど、韓ミュの世界の入口に立ったばかりで、まだまだワタシは 「ムヨルがいなきゃ嫌だ」 と駄々をこねそう (笑)。


□ □ □ □ □


ミュージカルナンバーはどれもスリリングな旋律。

ジェウン 「私」 が歌うナンバーでは、殺人計画を 「彼」 からもちかけられて断りきれず、もう戻れないと歌う 「Way too far (너무 멀리 왔어)」 が好きかな。この歌で、「私」 の覚悟が見えるような気がするので。

ムヨル 「彼」 が歌うナンバーでは、判決を待つ夜に不安で眠れず死ぬのが怖いという 「Afraid (두려워)」 がいいな。超人信奉者であれほど冷静に振る舞っていたのに、ここではただ死に怯える繊細な若者でした。

倉庫に放火して燃え盛る炎に恍惚としながら 「彼」 が歌う 「Nothing like a fire (정말, 죽이지?)」 も好きです。

今回、日本キャストの演目はあえて見ませんでしたが、彼らがどういうふうに演じているのか気になって動画を漁ったら、田代×新納ペアのものが上がっていたので見てみたら... えっ。歌詞に愕然。

「Nothing like a fire」 のオリジナルと訳詞を比較してみるとわかるのですが、これだけをとりあげて、とやかく批判するつもりはありません。全体を通して違和感がなければそれでいいとは思うのですが...。ただ、訳詞がオリジナルからかけ離れすぎていることがよくわかります。韓国語の訳詞の方が、はるかにオリジナルに近いですし、ちゃんと韻を踏んでいるし。

ごうごうと燃えさかる炎ほど、自分の心を癒してくれるものはなく、自分を奮い立たせるものもなく、また自分の欲望に火をつけるものもないと歌っているのです。その炎を見て恍惚とする 「彼」 は...。だから 「やさしい」 とはニュアンスが違うかな。

オリジナルと情景が違うなと思うところがいくつかありますね。「破滅」、「永遠」という言葉もオリジナルにはなく、超人思想の 「彼」 にはそぐわない言葉のような (笑)。

ワタシが翻案ものミュージカル苦手とする主要原因は、実はコレなんですよね。訳詞の違和感。まぁ仕方ないのかな。粗探しみたいですけどね~。解釈の問題でしょう。




[English] Nothing Like a Fire

There's nothing like a warm romantic fire
To put me in the proper frame of mind
There's nothing like a roaring, raging fire
To help me unwind


There's nothing like the sound of crackling embers
To calm me when my pulse begins to raise
There's nothing like the glow of sizzling embers
To brighten your face


Feel the heat intensify
Watch the sparks begin to fly
Watch the smoke fill up the sky
Straight to the stars
(straight to the stars)

There's nothing like the sight of something burning (something burning)
To soothe me with a hot seductive light (seductive light)
There's nothing like the smell of something burning (something burning)
To start to ignite my desire

There's nothing like a fire

Feel the heat intensify
Watch the sparks begin to fly
Watch the smoke fill up the sky
Clouding the night

There's nothing like a fire



[Korean] 정말, 죽이지?

언제나 따스해 로맨틱한 불
내 마음을 어루만져주네
강렬하게 소리쳐 화려한 불
날 편하게해


타닥거리며 갈라지는 소리
흥분한 내마음 잠재워주네
타들어가는 재의 밝은 불빛
날 빛춰주네


느껴봐 강한 열기
쳐다봐 튀는 불꽃
저것 봐 열기가득해
저별까지
(저별까지)

정말 죽이지 활활타는 불꽃 (타는 불꽃)
저 빛이 들뜬 나를 유혹하네 (유혹하네)
정말 죽이지 향기로운 불꽃 (향기로와)
내 잠든 욕망 깨워주네

날 어루만져주네

느껴봐 강한 열기
쳐다봐 튀는 불꽃
저것봐 연기 가득해
저별까지

날 어루만져주네


[Japanese] やさしい炎

狂ったようにダンスを踊る
キラキラ光る永遠の炎
壊れてねじれた心を
赤く照らす


燃え盛る何かが弾けて
音を立てて崩れ落ちた
この俺の気持ちを落ち着かせ
静かにする


火の粉はじけて
煙りとともに
登る果てには
星空
(星空)

焼け焦げた破滅の匂いがする (匂いが)
黒い空がオレンジに (オレンジに)
その中でやさしい炎が (炎が)
俺たちの心を

慰めてくれる

火の粉はじけて
空へあがってく
永遠の時へと
つながり

赤く赤く広がる



□ □ □ □ □



[追記] 

舞台はナマモノで、役者たちの息遣いまでもが聞こえてくるところが魅力だと思います。1 公演ごとに、立ち位置、仕草、セリフ回しが微妙に異なるところも、観客にとっては楽しみな発見となります。

今作品は 2 回鑑賞しましたが、やはり 2 回とも全く同じではなく、進化しているようでした。

そして忘れてはならないのが、演出力。映画が監督の力によるところが大きいように、舞台もまた演出家の力によるところが大きいのだとあらためて感じました。

2 人芝居は、2 人の会話、あるいはモノローグによって成り立つので動きが単調になりがちだと思うのですが、栗山民也さんの演出は、舞台セットに工夫が凝らされ、線、角度、距離が強く意識されていて、その瞬間、瞬間、2 人がどういう心理関係にあるのかがよくわかるようになっていたと思いました。

短期間で異国の演出家の要求にこたえて消化した韓国ペアの実力もさることながら、この作品の魅力は演出力にかかっていることは間違いありません。ただ、同じ演目を韓国の演出で見て、こんなに感動するかどうかはわかりません。

今回は演出と役者のアンサンブルがよかったのだと思います。




□ □ □ □ □



なんやかんや言いつつ、『スリル・ミー Thrill me』 にはいろいろな意味で惹きこまれました。

日本では、2013 年 3 月再演決定だそうです。またまた韓国キャストはあるのかな。次は NY キャストや UK キャストも連れてきて欲しいなぁ(笑)。

『スリル・ミー』 関連の動画を漁っていたら、日本キャスト、韓国キャストも真っ青な、超イケメンな 「私」 と 「彼」 を発見。昨年の London プロダクションです。

画像は London プロダクションの風景。音楽は Broadway オリジナル OST より「Prelude」。この序曲が始まると、もう 『Thrill me』 の世界へ誘われます。


(Thanks to Climarprods from YouTube)


『スリル・ミー』 がらみで、もう 1 本記事あげるつもりです。

tag: キム・ムヨル

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なお、旧館からの移行記事 (2012年3月以前) はうまく反映されていないものがあります。

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